学内での学びを学外で実践 安全教育について学会発表
2023.11.69月30日(土)に対面とオンラインで開催された、【第10回子ども安全学会】にて、教育学部体育専修3年の成原 拓巳さんが登壇し、「今夏の学生による小中学校でのプール・河川での安全教育」について発表しました。成原さんは、同じゼミの学生青木 輝星さん、奥村 光さん、朝長 唯さん、丸山 泰知さんとともに、稲垣 良介教授の指導のもと、継続的に溺水防止に関する授業を企画し、実践を重ねています。今回は、学会での発表を中心に、具体的な実践の内容を伺いました。
今回の学会は節目の大会と伺いましたが
お子さんを水難事故で亡くされた吉川優子さんが設立された一般社団法人吉川慎之介記念基金と子ども安全学会の共催での大会も、子ども安全学会発足10年を迎え、今年が最後の大会となりました。研究・実践報告は、高等学校の養護教諭や保健体育科教諭、大学教授が名を連ねる中で、大学生は私たちのグループのみでした。私たちの他には、安全教育やライフジャケット普及に努めるグループ、自分たちにできることを訴えた姉妹など、多様な方々の取り組みが発表されました。
小・中学校における水難事故防止指導の活動報告をされましたが、どのような内容でしたか
この二つのグラフを見てください。この円グラフから分かるように、河川で、水遊びでの事故が約半数を占めています。私たちの課題、研究の出発はここにあるといってもよいと思います。川や水遊びというのは子どもたちにとってもとても身近な存在です。そこで事故が起きてしまうことに、問題意識を持ちました。発表の内容は、実際に出向いて現地で小学生に指導したこと、それを通して学んだことをを中心に話しました。発表内容とはそれますが、学会発表に向けて取り組む中で意識が変わったことがあります。
吉川優子先生からは、安全教育の日本の実態や課題意識を講演などを通じて学ばせていただいてきました。私たちが学会に向けて準備する中で、継続して取り組むことや活動を広めていくことの重要性など、これまでより意識が高まりました。私たちのゼミでは毎年3年生が中心になって、実践を重ねています。これは学会後ですが、教育学部の学生がこういった実践を継続することは珍しいとの言葉もいただき、今後他学の学生が実践するときには一つのマニュアルになるのではないかとも考えるようになりました。
今年もいくつかの学校で実践をさせていただきました。一宮市立葉栗小学校 、多治見市立市之倉小学校、中津川市立付知中学校、下呂市立尾崎小学校です。今回の発表は特に、尾崎小学校での実践を中心に行いました。
発表内容とも関連しますがどのような実践をされたのですか
私たちは現場に出向き、そこで指導することの価値に気づきました。その一つに、「危険なことへの意識」を指導者自身も変えていくことの必要性です。「危険だからやらない」とか「近づかない」とかというのではなく「安全を確保するにはどうしたらよいか」という発想の転換をすることが大事だと感じました。いくつかの学校にうかがって指導しましたが、それぞれの川の様子は異なります。現場ならではの学びです。どの川にも共通する要因は四つです。流れ、深さ、水深、川底です。この川の4要素を意識して、授業にも反映しました。
授業の流れを簡潔にお願いします
5.6年生の授業を中心に、まず学習のねらい、「過去の事故を繰り返さないために」「命を守るために」どうしたらよいか。を学びの目的としました。実践の出発が、ライフジャケットでしたので、まず、その存在感に気づいてもらうことをしました。ライフジャケットは浮く。ボールやペットボトルも浮きます。「浮く」ための手立てをいろいろなものを使って、浮くことを利用した遊びを工夫しました。「遊びを通して楽しみながら、学びにつなげる」そのことからライフジャケットの安全性に気づかせていく授業を組み立てました。
そうしてうまれた「川のおきて」とはどういうものですか
「さらだばあ」という言葉でまとめました。それぞれの事柄の最初の文字をとりました。「さ」ンダル、「ら」イフジャケット、「だ」れかと、「ば」しょ(場所)です。子どもたちと確認したのは「流れたもの」は無理に取りに行かないこと。こういった言葉などを使うことで、いつも遊ぶ場所にも危険な場所があることを少しずつ分かってくれたようです。川は安全に遊ぶ場所だということを広く伝えたいと思います。
来年度に向けて考えていることはありますか
私たちが学びを深めることは、教師としてのスキルも高めることになります。活動は継続したいですし、後輩にも引き継ぎたいです。来年に向けては、絶対に命を落とすことはない、というライフジャケットへの過信を少しでもぬぐいさりたいこと。指導にあたる際は、教師が「教える部分」と子どもから「引き出す部分」を明確にすること。ねらい、活動、まとめをつないでいくことの三点です。
更にこんなことも語ってくださいました 学生というより、すっかり「すっかり教師の顔」になっていました
正しいことを学んでもらうためには、教師自身が学ぶこと。今回発表をして、学会でもっと学びたいと感じています。安全教育を第三者ではなく、当事者として進めていくことを再認識しました。
学生だからできること、学生が実践することで価値が出てくることがたくさんあります。本学の学生が多くの研究者、実践者の中で堂々と発表してくれたことに感激しています。学会発表の時期は、今回のメンバーの3年生は小学校実習の直後、中学校実習の打合せと重なり、最後のツメが限られた時間の中での取り組みとなりました。この取材インタビューの時間は、本学が掲げる、「学生を教員にする」が具現化されている場面に出会うことができた素敵な時間となりました。