第9回大学生対象英語レシテーションコンテスト

2021.11.24

11月月18日(木曜日)に先日開催した高校生対象のコンテストに続き大学生対象英語レシテーションコンテストを開催しました。今年は教育学部の3名を含む、29名という過去最多の参加者のもとでの開催となりました。中心になって準備をすすめてこられた外国語学部長尾純准教授にお話を伺いました。


暗唱を通して学ぶもの~身につく英語力

ーこのコンテストの目的や意義について教えてください。 

「レシテーション」とは「暗唱」のことです。このコンテストでは、英語の物語、スピーチ、映画の1シーン、TED.comなどから、2分程 度の英文を暗唱します。発音の習熟度、強勢やイントネーション、リズム、ボディーランゲージや目線などを含め、英語の暗唱とし ての完成度を競います。キング牧師の演説(I have a dream)や、オバマ前大統領の就任演説、映画『セント・オブ・ウーマン』のアル ・パチーノの演説シーンなど、何を選択するかは自由です。英語の音声や映像を繰り返し聴いて練習し、発音やイントネーションを徹底して真似るため、スピーチが完成に近づくにつれて、自分の発話もスムーズになり、英語特有の発音やイントネーションが身につきます。


年々盛んになるコンテスト

ー今年の参加者について教えてください。

 今年は外国語学部から27名、教育学部から3名です。1年生が4名、2年生が9名、3年生が7名、4年生が9名です。

 どの参加者も意欲的で、当日までに100時間を超える練習をしている学生もたくさんいます。1ヶ月ほど前から有志で集まり、毎日朝と夕と時間を惜しんで練習している学生たちもいます。その際、昨年度優勝した4年生の有賀君を中心に、下学年に高度なアドバイスをしています。

ー先輩が後輩に自分の体験や学びを伝えていくのですね。

取り組みの中で大きく成長する

ーコンテストに向けて先生方はどのような指導を行いますか。また、学生はどのように練習を進めていきますか。

 大体コンテストの1ヶ月〜2ヶ月前ぐらいから準備を始める学生がでてきますね。 まずは題材選びのアドバイスをします。具体的にはTED TalkやYouTubeから良い題材を見つけるように指導します。見つけた動画を2分程度に編集し、音声ファイルを作成します 。そしてまず日本人にとって厄介な音素を練習します。大体苦手な音というのは決まっていて、それを徹底的にマスターできるように各自練習を重ねます。次にAudipoというアプリケーションを使って、初めは0.5xのスピードでイントネーション、母音の伸び縮み、声の強弱を確認します。その後でシャドウイングをするように指導します。

 上手になってきたら、今度は再生を0.75xにして練習します。 熱心な学生は頻繁に私の研究室に来ますね。私以外にもLounge MELTにいるアドバイザーに聞いてもらって、アドバイスを受けたり 、専任の先生(テイラー先生、アラン先生、ウィルキンソン先生など)にも聞いてもらっているようです。

 表情や仕草は最終段階ですね。まずは音素、次にイントネーション、リズム、それができた後で表情や仕草を自然な形で身につけていく 、という流れです。

 とにかくコンテストに向けて準備することがコンテストで賞を取ること以上に重要だと思っています。自分の英語を客観的に見つめ直して、サポートを得ながら、 改善していくことができる貴重な経験になります。


ー2分間という英語を徹底的に学ぶ中で大きな力がつくのですね。

ーコンテストの中でどのような成長がみられますか。

 そうですね、まず、コンテストのために覚えた英語のスピーチは一生忘れないと思います。2分程度の短い英語ではありますが、その2分のために100時間を超える練習をするわけですから、参加した学生の英語は普段の会話においても自然で、生き生きとしています。

 また、多くの観客が見つめる中で自分の母語ではない英語で堂々と発表するのですから、大変高度で知的な技能が求められます。ものすごいプ レッシャーを感じながら、舞台に立っています。それを達成した時、その経験が大きな自信になっていくことは間違いありませんね。外国であれ母語であれ、人前で堂々と話すというスキルはきっとこのような場数をこなすことで向上するのだと思います。今回コンテストに参加した学生たちは、まさに聖徳の誇りだと思っています。

 また、昨年度参加した学生が再度挑戦しているのは嬉しいですね。しかも前年の発表よりも一回りも二回りも成長しているのが素晴らしいです。



ー審査員の先生方からどのような評価をいただきましたか

 三人の審査員の先生方からは次のようなコメントを口頭でいただきました。それを文字起こしして、日本語に翻訳すると次のようになります。

  First, you all did a really really wonderful job. The thing that I enjoyed the most was that several of the students who did the recitation had props, for example the cigarettes, or they wore a green suit jacket and a black turtleneck like in Hillary Clinton’s speech. It was the exact same as the picture up here. It’s very very good for your presence when you have these props to help show what kind of speech you want to give. These are really really nice. My advice for next year is to please focus on pronunciation first. Speed comes after. Do your pronunciation first. I know we had a very short time, only two minutes and 30 seconds, and that can be really difficult. But there were a few points where it was very difficult to understand. For us, if we looked down and listened, we couldn’t understand so easily. But if we watch your mouth, we could understand. This is a big difference. Okay so please focus on pronunciation. And then add speed, and you will sound a lot more native like us.(Rachael Emery)

 まず、皆さん全員が本当に本当に素晴らしい発表をしてくれました。一番楽しかったのは、暗唱をした学生の何人かが小道具を持っていたことです。例えば、タバコを持っていたり、ヒラリー・クリントンのスピーチの時には、緑のスーツジャケットと黒のタートルネックを着ていたりしました。ここにある写真と全く同じ服装でした。自分がどんなスピーチをしたいのかを示すために、このような小道具があると、とても存在感が出ます。これは本当に素晴らしいですね。 来年に向けてのアドバイスとしては、まず発音に力を入れてください。スピードはそのあとです。発音を先にしてください。2分30秒という短い時間でしかないため、これは本当に難しいことだと思います。しかし、いくつかの発表で、非常にわかりにくいところがありました。私たちは、下を向いて聞いていると、なかなか理解できませんでした。しかし、口元を見ていれば理解できる。これは大きな違いですね。ですから、発音を重視してください。そして、その後でスピードをつけることで、ネイティブに近い発音になります。(ラシェル・エメリ先生)

  Thank you very much, and great job. You all did a fantastic job. Everybody did a fantastic job. Really easy for us to do this. It’s really enjoyable too. I was particularly impressed by the range of topics that you chose. I think quite often with speech contests, it’s all going to be this or this or this, but you were kind of doing really stuff that was really kind of far out there, and it was really interesting to hear. I also thought it was incredibly impressive the way that so many people were able to remember so much really difficult stuff because some of those actually had words that weren’t really words. They were just kind of, um, the TED Talk one was kind of gobbledygook, just nonsense words, but you remembered all those perfectly. For next year or for people who are doing this again, I would have the same point as Racheal, which is speed. The faster you get, the more difficult it is for us to understand. So sometimes you kind of feel like you want to speed up, but when you get that feeling, kind of slow it down just a little bit. It will still be fast, but it will be easier for us to follow. Thank you very much. (David Barker)

 ありがとうございました、そして素晴らしいコンテストでした。皆さん、素晴らしい発表をしてくれました。審査員の仕事も本当に簡単にできましたね。それも本当に楽しみながら。私が特に感心したのは、皆さんが選んだテーマの幅広さです。スピーチコンテストでは、大抵の場合、これとこれとこれ、と決まったものになりがちですが、皆さんは本当に突拍子もないことをやっている人もいて、聞いていてとても面白かったです。また、多くの人が非常に難しい内容を完全に暗記していることにも感心しました。なぜなら、実際には言葉ではない言葉も含まれていて、TED Talkでしたっけ、意味不明な言葉もあったのですが、それらを完璧に暗記していました。来年のために、あるいはもう来年度参加する人のために、私はラシェルと同じアドバイスになりますが、スピードを注意するようにと言いたいです。スピードが上がれば上がるほど、私たちにとっては理解するのが難しくなります。ですから、スピードを上げたいと思うこともあると思いますが、そんなときは少しだけスピードを落としてみてください。私たちにとっては分かりやすくなります。どうもありがとうございました。(デイビッド・バーカー先生)

 The standard this year was really high. It’s the highest I’ve ever seen. Really anybody could have won it, and everybody that gave a speech today is a winner. I mean, just to memorize a speech and stand up in front of your friends and speak it with passion and conviction. That’s not easy. All 29 people that gave a recitation today were incredible. They were really good. It was so difficult to choose a winner. With all these winners here, what separated them was that the speech was theirs. They didn’t copy the person who gave the speech on the internet or on TED talk or whatever it was. It was their speech. It was their message. They owned it, and they believed it, and it was very easy to tell that. So that was really good. They also had a very good use of pauses. Of course, speaking is important, but also pauses and silence is very important. So they were very good at making a point and building tension and getting louder and saying what was their really important point, and then pausing to let it sink in, and that’s what they all did very well. My recommendation for next year is to be careful about wandering around the stage. It’s very tempting to just walk like this, but backwards and forwards without a purpose. It’s good to move, but make sure when you move you have a point to moving, and you’re not just moving for the sake of it, but you have a reason to go from one place to another and then stop and make sure you know why you’re doing that and not just kind wander around aimlessly because it’s a little bit distracting. But it was an amazing competition this year, so well done, everybody.(Paul Wicking)

 今年は全体的にレベルが高かったです。今まで見た中で一番高かったですね。本当に誰が優勝してもおかしくなかったですし、今日スピーチをした全員が優勝者だと思います。スピーチを暗記して、友人の前に立ち、情熱と信念を持って話すことは、簡単なことではありません。今日、レシテーションをした29人全員が素晴らしかった。本当に素晴らしかったです。優勝者を選ぶのはとても難しかったです。ただ、ここにいる受賞者たちのが、表彰台に立っているのは、そのスピーチが自分のものだったということです。ただ単に、インターネットやTEDトークなどでスピーチをしている人の真似をしたわけではありません。自身のスピーチと化していました。それはもう単なるコピーではなく自身のメッセージなのです。彼らはそれを自分のものにし、それを信じていました。それがとても良かったですね。 また、間の取り方がとても上手でした。もちろん、話すこと自体も重要ですが、間や沈黙も非常に重要です。緊張感を高め、声を大きくして自分の本当に重要なポイントを言い、それを聞き手がちゃんと受け止められるように間を取るのがとても上手でした。来年に向けての私の提言は、ステージ上を歩き回ることについてです。目的もなくうろうろと歩くのは、一見とても効果的に思えるかもしれません。ステージを歩くのはいいことですが、歩くときには歩く理由がないといけません。ただ目的もなくに歩き回るのではなく、理由・目的を持ってある場所から別の場所に行き、立ち止まってください。目的もなくうろうろするのはやめましょう、ちょっと気が散ってしまうので。今年の大会は素晴らしいものでした。皆さん、お疲れ様でした。(ポール・ウィキン先生)

ー先生方からも高い評価をいただいていますね。また、具体的なアドバイスがあり、来年につながりますね。

ー本日はありがとうございます。ますます盛んになっていくことを念じています。

【参加者リスト】

①外国語学部 1年生 鈴木美羽 ② 外国語学部 1年生 鈴木涼太 ③ 外国語学部 1年生 髙橋 美結 ④外国語学部 1年生 山田浩基 ⑤外国語学部 2年生 大岩樹奈 ⑥ 外国語学部 2年生 沈 慧婷 ⑦ 外国語学部 2年生 ダシルバ正弘 ⑧ 外国語学部 2年生 中島 健吾 ⑨ 外国語学部 2年生 中村 崚成 ⑩ 外国語学部 2年生 服部楓 ⑪ 外国語学部 2年生 福元さくら ⑫ 外国語学部 2年生 松原大和 ⑬ 外国語学部 3年生 伊藤さゆり ⑭ 外国語学部 3年生 蒲 美紗希 ⑮ 外国語学部 3年生 清水あゆみ ⑯ 外国語学部 3年生 田代直己 ⑰ 外国語学部 3年生 橋本明樺 ⑱ 外国語学部 3年生 松浦 摩奈 ⑲ 外国語学部 3年生 岡本紗代子 ⑳ 外国語学部 4年生 秋江諒摩 ㉑ 外国語学部 4年生 有賀剛史 ㉒ 外国語学部 4年生 伊藤涼香 & 廣瀬美里 ㉓ 教育学部 4年生 後藤慶晃 ㉔ 外国語学部 4年生 志茂 あずき ㉕ 外国語学部 4年生 長尾綾真 ㉖ 教育学部 4年生 中野厚人 ㉗ 教育学部 4年生 渡辺眞衣 ㉘ 外国語学部 4年生 渡部 会香


【成    績】

1位 外国語学部3年生 田代直己 The schwa: Listen carefully!

2位 外国語学部3年生 清水あゆみ How to sound smart in your TEDx Talk

3位 外国語学部4年生 秋江諒摩 Grit: The Power of Passion and Perseverance

4位 外国語学部2年生 ダシルバ正弘 You is the meaning

特別賞 外国語学部4年生 有賀剛史 The Power of Words

特別賞 外国語学部2年生 福元さくら Legally blonde

特別賞 外国語学部2年生 沈 慧婷 Hannah Gadsby on Being a Woman in a Man's World


コンテストの動画



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