【硬式野球部】19年ぶりに手にした、全国への切符。

2021.9.10


2021年、岐阜聖徳学園大学硬式野球部は東海大会で強豪校を制し、実に19年ぶりに全日本大学野球選手権に出場しました。9月から始まる秋の大会を控え次のステップへと進もうとしている今、チームを全国の舞台へと導いた小山監督、木村キャプテン、そして部長として見守る寶壺教授に、それぞれの立場からの率直な思いを伺いました。

[ プロフィール ]

(写真左から)
小山貴本 Takamoto Koyama

岐阜聖徳学園大学硬式野球部監督

出身地:長野県  出身校:丸子実業高等学校(長野) 岐阜聖徳学園大学経済情報学部(平成14年度卒業)/大学3年次 第50回全日本大学野球選手権記念大会出場 /大学4年次 第51回全日本大学野球選手権出場(主将) 第33回明治神宮野球大会出場 /2003年岐阜聖徳学園大学硬式野球部コーチ就任(9年間)/2012年岐阜聖徳学園大学硬式野球部監督就任(10年目) 現在に至る。【モットー】 野球を通じて立派な社会人となる。野球を通じた人間教育。

木村 慎太 Shinta Kimura

岐阜聖徳学園大学硬式野球部主将

出身地:滋賀県  出身校:龍谷大学付属平安高等学校(京都) 教育学部社会専修4年  第70回全日本大学野球選手権記念大会出場(主将) 将来は教員を目指している。持ち前の落ち着いた性格と的確なコミュニケーションでチーム作りに尽力し、監督・コーチや選手からの信頼も厚い。  

寶壺 貴之 Takayuki Hoko

岐阜聖徳学園大学硬式野球部部長

出身地:岐阜県  出身校:岐阜高等学校(岐阜)同志社大学文学部(平成4年度卒業)/ 岐阜教育大学非常勤講師、同志社大学嘱託講師、愛知産業大学専任講師(当時、硬式野球部副部長)等を経て現在、岐阜聖徳学園大学経済情報学部教授(専門:応用言語学・映画英語教育)、2021年1月岐阜聖徳学園大学硬式野球部長就任、現在に至る。 【モットー】 文武両道。外国語教育を通した人間教育。 


新キャプテンがもたらした、チームの変化

ーまずは、全国大会出場おめでとうございます。19年ぶりということで、とても盛り上がったと思いますが、熱は落ち着きましたか?

小山 興奮冷めやらぬという感じでしたが、ようやく落ち着いてきました。

ー早速ですが、岐阜聖徳学園大学硬式野球部の普段の活動について教えてください。

小山 部員は1年生から4年生まで121人の選手に加えて、学生コーチが5人の合計126人で、岐阜キャンパスと羽島キャンパスの間の専用グランドで週6日練習しています。練習は授業前の朝6時半くらいからのメンバーと、その後1限目がない人が続き、授業が終わってからは17時くらいからやっています。

ー120人以上の選手がいるなか、試合に出場できる選手は限られていますよね。選手たちのモチベーションをどう感じられていますか?

小山 全員のモチベーションを上げるのはとても難しいです。スタメンは10人しかいないけれど、そこに入れない選手にも何かしらのチャンスをつくっていかなくてはならない。キャプテンが引き継がれ、新チームになってからチームが非常に変化したと感じています。

木村 僕は昨年の10月下旬に監督さんからご指名をいただいて、キャプテンに就任しました。


ー具体的にはチームにどんな変化があったのでしょうか?

木村 入部当初から監督さんから「主体性を持って取り組むこと」が大切だと言われていたので、どうすれば選手が主体性を持って取り組めるかということを最優先に考えてきました。具体的には、例えば、ウォーミングアップを個人でやることで、自分で考えたり調べたりする習慣をつけるということに取り組みました。

小山 木村は落ち着いていますし、よく考えているので、わたしたち監督、コーチの意図を把握したうえで、それをプレーヤーの目線で選手に伝えてくれます。良い練習メニューを提案をしてくれて、選手に対しての話し方も非常に丁寧なので、メニューの変更もスムーズに進みましたね。

ー木村さんが監督と選手の橋渡しをされていたんですね。

木村 3年生の頃から副キャプテンとは自主性を持てる環境をどうつくるかという話をしてきましたAチームに最上級生が少なくて、下の学年の力を借りなくてはならないと思っていたので、ずっと下級生には声を掛けていたんです。野球をもっと追求しようと声を掛け続けたら、休日返上で自主練習する選手が現れたり、夜遅くまで照明をつけて練習している後輩がいたり、これまで見られなかった光景を見ることができているのですごくいい風潮だと感じています。


スローガンは「ジャイアント・キリング」
負けていい試合は一試合もない


ー今年のスローガン「ジャイアント・キリング」に込めた意味を教えてください。

木村 「負けていい試合は一試合もない」というのが僕の考え方で、練習試合でもどの相手に対しても全部立ち向かって全部倒そうという思いを込めてこのスローガンを掲げました。一試合一試合全部勝てば自ずと日本一になるので。

ーシンプルですが、とても難しいことですよね。

木村 そうですね。もちろんリーグ戦とオープン戦ではモチベーションやテンションの差はありますし、求められることも違います。ただチームとしては、今年はとにかくどの試合、どの相手でも勝ちに行くというのを目指してやっています。ジャイアント・キリングというスローガンには「格上の相手を倒す」という意味があります。春の大会で僕たちは岐阜リーグを4位で通過して、東海大会では静岡と三重のチャンピオンと戦いましたが、圧倒的に格上の相手です。でも僕たちは強い相手を倒すという気持ちでここまでやってきたので、物怖じせず、身構えずにぶつかっていけた結果が東海大会優勝につながったのだと思います。


ー監督の目線からは選手たちの姿勢をどうご覧になっていましたか?

小山 本当に一試合一試合全力だったんですよね。一試合終わるごとにヘトヘトになって…負けていい試合はないというなかでも、負ける試合もありました。負けるたびに涙している選手もいて、それを見た時にその気持ちが素晴らしいなと。

ー東海大会での様子はいかがでしたか?

小山 東海大会では普段以上の力を発揮していましたね。過去19年の間に5回東海大会に出場しています。実は、今の4年生は1年生の時にも秋の東海大会に出ていて、当時は今年勝った2チームに負けているんですよ。そういう経験もありながら、今年はジャイアント・キリングをテーマにやってきたのがよかったなと。ベンチで見ていても頼もしかった。非常に成長を感じました。

ー技術力はもちろんですが、お話を伺っていると精神力の強さを感じます。

寶壺 本学の建学の精神に「以和為貴(和をもって貴しとなす)」という言葉があります。私自身、この1月から野球部に関わらせていただいて、まず驚いたことが建学の精神を体現するかのような木村キャプテンの主体性です。そして主体性が部員の皆さんに浸透しているんです。それがチームの原動力のような気がします。


ー木村キャプテンは自分自身が主体性を持って取り組んでいるだけではなくて、それを選手に伝えるという点においても努力されているんですね。

寶壺 木村さんは教育学部で学んでいて、彼は教え方、伝え方が非常に上手なんです。私は 野球の専門ではないので、余計にそういった姿勢を見ているんですけど、選手にも考えを 共有して、チームメイトも互いに教え合う姿勢が素晴らしいと思います。そして、コロナ の大変な時期には全員が感染防止についてとても頑張ってくれました。大学生だし、ちょ っと出歩きたいということもあると思いますが、本当に厳しく自粛していて、その精神力 に感動します。監督、コーチ陣、スタッフそしてキャプテンと選手の一体感を感じられます。

コロナ禍を乗り越え手にした全国への切符

ーコロナ禍において活動にはどんな影響がありましたか?

小山 昨年の4、5月は練習ができなかった時期もありましたが、そのあとは長期的にやらなかった時期はないです。今年の1月から3月あたりは岐阜県から緊急事態宣言が出てていたので、週に4日間くらいに日数を減らしていました。その時は1日に2時間しかできなかったので、キャプテンと話し合って、いかに効率よく練習するかを考えました。ある意味2時間に集中力を持っていけたというのは、今思えばプラスになったかもしれないです。

ー逆境をプラスにされたんですね。木村さんはいかがでしたか?

木村 時間が制限されるというのがあったので、練習内容は監督や指導者の方と相談しながらやっていましたが、できることをやるしかないということに変わりはないです。幸い自主練習は制限がなかったので、自主練習が選手の自主性への任せどころかなと思い、バッティングに関しては全て自主練習にしました。守備練習はある程度統率を取らないといけないので、2時間をとにかく守備練習に割いたんです。選手たちは自主練習に積極的に取り組んでくれたので、結果的に練習量はそこまで落ちてなかったのかなと思います。


ー全国大会の前後で、ご自身の心境やチームの雰囲気に変化はありましたか?

小山 全国大会出場前はせっかくいただいたチャンスなので結果を掴みにいこうと非常に盛り上がっていました。選手としても、技術力、人間力ともに最も成長した時期ではないかなと思いますね。わたし自身も東京ドームのグラウンドは初めてで、あの高揚感は忘れられません。

木村 全国大会出場が決まって、すごく嬉しかったんですけれど、目標は日本一だったのでうまく気持ちを切り替えることに苦労しました。東海大会優勝の喜びがずっと続いていたんです。全国大会から戻ってくると、みんなすごく変化していましたね。やっぱり全国でプロに注目される投手と戦って、今のままでは勝てないというのを全員が感じたんです。今はいろんな変化に着手している最中で、順調かといわれるとそうでもないですが、9月の大会までには十分戦力を上げて間に合うという見通しは立っています。


ー寶壺教授から見ていかがでしたか?

寶壺 東海大会では選手全員が試合に非常に集中されているのを感じました。全国大会では 19年ぶりということもあったので、選手のみなさんに代表としての自覚と自信が出てきたと感じられます。常に高い気持ちを保っての状態を継続していくことは難しいかもしれませんが、教員としてはこれからもチームでコミュニケーションを取りたいと思っています 。そして選手の皆さんには、モチベーションをどう継続していくのかをこれからも模索してほしいと考えています。


応援される人間になること

ーこれだけ本気で野球に向き合う中で、木村さんは学業と部活動との両立はどうされていますか?

木村 僕自身はもともと教員になりたかったのと、野球を真剣にやりたかったのでこの大学を選びました。選手たちには「いろんな人から応援されるような選手になろう、立派な野球人になろう」という話をしていて、そのためには野球だけやってるわけにはいかないんです。

ーなるほど。


木村 今回、全国大会に出た時に僕がお世話になった教授が遥々応援に駆けつけてくれて、学業を疎かにせずに何事も一生懸命やろうとしてたからこそ、応援してくださったのかなと改めて感じました。選手たちにはそういう人間になってほしいですし、野球は続けるのに限界があるので、就職するにあたっても、一人の人間として自立しないといけないですよね。人間性を磨くことも野球の魅力だと思うので、学業と野球の両立に関して何も苦痛に感じたことはないですね。

ー野球と学業、どちらにも共通することがあるんですね。

木村 「伝える」ということひとつとっても、ただ言葉で伝えるだけではなくて、時には感情的にならないといけないことはありますし、伝えたからには誰よりも頑張らないといけません。キャプテンとして伝える側の人間が中途半端なことをしていたらいけないので、学業でもそうですけれど、とにかく姿勢で見せるということは意識してやっていますね。

ー9月には秋の大会を控えているということですが、目標を教えてください。

木村 全勝優勝、それに尽きます。岐阜リーグも、東海大会も、全ての試合で勝って、明治神宮大会で優勝したいと思います!

小山 やはり日本一を目標にやっているので、明治神宮大会での優勝が目標です。特に、木村の代はこれでラストなので、悔いのないように一日一日を大事にしようということも伝えていきたいです。4年生の秋まで部活動を続けるというのは本当に大変なことなので、最後まで挑戦する選手には敬意を表しています。

ー秋の大会でのご活躍もとても楽しみです。本日はありがとうございました!

記事ランキング
Access Ranking

人気のタグ
Popular Tags

関連記事
Related Post