学校の再開~卒業生からの声が届いています~

2020.6.18

多くの教員を送り出している本学教育学部。コロナウイルス感染症拡大防止のため学校現場にも多くの制約がなされ、同時に安全確保の手立てが講じられました。そんな現場に勤務する卒業生から現場の様子が伝えられました。(教育学部平成30年度卒業 早川 聡さん)


勤務先の学校で

 2020年2月27日の夕方、一瞬にして教育界の日常が失われる内容が宣告されました。あの瞬間から世の中の当たり前が失われたと言っても過言ではありません。毎日学校に通って授業を受け、休み時間には学級や学年の友達と楽しく話をしたり、思い切り遊んだりする日常が一瞬にして消え去りました。

 あの日から早くも約3か月が経ちました。5月下旬、緊急事態宣言の解除の見込みとともに学校を再開する準備が始まりました。今回は時期を三つに分け、私が勤務している小学校の現場の様子や子どもたちの様子を書き記したいと思います。「その時代に生きた証」「どうのり切ったか」「何を考えたのか」などの視点で「withコロナ」「afterコロナ」の時代に向けて、子どもたちの姿から学んだことです。



3〜4月の臨時休業期間~ただただ不安が・・・

 突然の休校判断に子ども達のみならず、教員をはじめとした大人も驚きを隠せない様子でした。特に6年生は修学旅行も終え、義務教育6年間のまとめの卒業式を残すのみとなっていました。もしかしたら卒業式すら執り行うことができないかもしれないという最悪の場合も想定されていたため、子どもたちの不安や心労は計り知れないものがあったと思います。次に学校に来れるのはいつになるのか分からない状態でした。

 実際、私の勤務校では卒業式は6年生と卒業生1名につき1名の保護者のみで行いました。3密を避けるために、新年度の始業式や着任式は通常のような体育館での実施ではなく、子どもたちは各教室で放送で視聴参加する形で行いました。担任にとっては新年度に欠かせない「学級開き」という言葉も虚しく、実際に各教室で行われたことは、新しい学年の教科書や休校延長に対応しての追加課題の配付など事務的な内容のみにとどまりました。

 日々目まぐるしく情報が飛び交い、昨日時点で最新だった情報が、次の日には最新では無くなっていました。何を信じて動けばいいのか分からない状況下で、文部科学省からは指示が降りてくるだけで現場は疲労困憊でした。文部科学省から県教育委員会、市教育委員会とその都度協議されるため学校長の判断のもと教員が動き始めるのに時間がかかったことも確かです。また、報道が先行するため、現場の教員はその情報に右往左往する場面もたくさんありました。

 また、教員の「密」を避けるために学校に出勤せず業務を行う在宅勤務命令も記憶に新しいです。人と人との直接のコミュニケーションで日々の業務(教育)が成り立っている職業な上、テレワークを行える機器整備も当然行われていないため、在宅勤務の中で実際に学校勤務しているのと同様の業務を行うことには大きな壁があったように感じます。常日頃から情報漏洩に細心の注意を払っているからこそ、自宅の一般ネットワークで業務を行ってもよいものか不安になることもありました。


5月の臨時休業期間中・・・気になる子どもたちの生活

 ゴールデンウィーク中に緊急事態宣言の延長が発表され、現場は再度追加の課題の作成や受け渡しに対応を追われました。加えて、子どもの健康状態や家庭での様子の確認のため、各家庭に定期的に電話で確認するよう指示が出されました。課題受け渡しの際には、子どもも保護者と共に受け取りにきてよいことになったため、半数以上の子どもたちと久しぶりに会話をすることができました。家庭での話を聞いてみると、休業期間をよい機会と捉えて、たっぷりある時間を前向きに様々なことにチャレンジしながら過ごすことができている子もいれば、学校生活のリズムから大きく外れ、乱れてしまっている子も多くいました。日々の家庭の指導力が大きく響いてくることを教員として痛感しました。私たち教員は日々目の前の子どもに接していますが、その後ろには常に保護者の方の支えがあることを改めて感じたのです。「学家連携」の一層の強化を求めて行かなければならないと思います。


5月下旬からの学校の再開・・・不安を残したままで

 全国各地で緊急事態宣言が解除される動きを受け、長かった臨時休業に終止符を打つことができました。学校再開準備期間という名称で、各クラスがおよそ半数になるように分け、グループ別での登校・授業が再開しました。分散登校の始まりです。

 子どもたちは、自分の新しいクラスに誰がいるのかすら記憶が曖昧な状態でした。始業式の日のは3時間程度しか一緒に過ごしていなかったので、当然のこととです。私は昨年度から学年を持ち上がった担任のため、多くの子たちと関わりがありました。しかし、休校で子どもたち同士も、子どもと私の関係性にも距離ができたのか、どの子も話をしてもよそよそしさが抜けない様子でした。授業での発言も多くあるとは言えない状態が続きました。話題といえば、コロナのこと、安全衛生指導ばかり。授業も遅れを取り戻すために進度を気にしつつ、飛沫などにも配慮しての展開ですので、心を通わせ合うのには時間が必要でした。

 そして6月。全員登校が始まりました。約2か月を経て、新年度をスタートさせることができました。しかし、現場は子どもたちの下校後の学校の消毒に追われます(全員の机、階段の手すり、廊下の窓、トイレの手の触れる部分など)。当初は次亜塩素酸水を使用していましたが、コロナウイルスへは無効とする指摘する情報が入り、消毒液も変更となりました。消毒液の不足や情報の錯綜に惑わされた1例です。本来は子どもたちの心のケアについて時間や神経を遣いたいところでしたが、安全確保が優先され、作業が多くなったことは事実です。


終わりに・・・今学校で、そしてこれから

 文部科学省や自治体は各学校に指示を出します。指示を出すのは容易です。送付された通知文を受け、指示を具体化し、実施するのは各学校現場です。文部科学省が「定期的に子どもの健康状態を確認しなさい」と指示を出せば、現場は各家庭に連絡をとる必要が出てきます。これだけ世の中にインターネットが普及していても、多くの学校では家庭との連絡に電話を使用していることが多いかと思います。当たり前のことですが、電話は双方に余裕があるときにしか成立しません。共働きの家庭が多くなっている中で、教員の勤務時間内に電話をかけ終わることは困難を極めます。

 だからと言って、連絡を疎かにするわけにはいきません。子どものことが気にならない教員はいません。教員としての役割と、一人間としての私生活。ワークライフバランスと言われるようにはなっていますが、なかなか現実は厳しいものがあります。「働き方改革」が叫ばれはじめたタイミングでのこの新型コロナウイルス感染症拡大。

 このコロナウイルス拡大の環境下で、教育界には多くの問題が浮かび上がってきたと思います。夢を持って選んだ教員の道はまだ始まったばかりです。経験も教員としては未熟ですが、小さいながらもしっかりと声を上げ、子どもたちのため、そして将来の自分たち教員のために、強い想いを胸に日々教壇に立っていきます。

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