水辺の安全教育~子どもの命を守る授業

2021.6.29

「新型コロナウイルスの影響により、水泳の授業が行われない学校があります。学校での水泳の授業の目的は、速く泳いだり、長く泳いだりする(これは正しい泳法を身に付けることにつながります)だけではなく、水難事故から身を守るための技能を習得させることも含まれます。水泳の授業が行われないことは、子どもたちにとって、水難事故防止対策上の貴重な学習の機会損失となります。」と語るのは本学教育学部の稲垣良介教授です。


我が国の水難事故による死者

令和元年の統計によると、水難事故による死者・行方不明者数は695名にものぼります。子どもの水難事故による死者・行方不明者を場所別にみると、河川50%が最も多く、次いで海30%、湖・沼・池6.7%、用水路6.7%、プール6.7%となっています。

コロナ禍で川での事故が急増しています。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、プールなど水遊びの場が閉鎖となり、川を訪れる人が増えたことが原因ではないかとも言われています。


岐阜県内の実情

岐阜県警によれば、令和2年度に岐阜県内で発生した水難事故は前年比17件増の41件。過去10年で最悪の事態となりました。43人が事故に遭い、約半数の方が亡くなりました。水難事故全体の約半数が8月に発生しています。

稲垣教授はこう続けます。「コロナ対策の観点から、バーベキューなどで河川を利用することの自粛を求めることで、河川敷で人目につきにくくなり、事故発見や通報、初期対応が遅れたり、他県のいつもと違う河川や海に行って遊ぶ人が増える分、思わぬ事故が起きたりする危険があるのでは。」


吉川優子氏を講師に ~子どもの事故事例から考える~


こういった実情をふまえ、教育学部2年生の学生を対象に水難事故に対する授業が行われました。

今回講師にお願いしたのは、5歳の息子さんを幼稚園のお泊まり保育中に川の事故で亡くし、それ以後子どもの安全を守るための啓発活動を行っている、一般社団法人「吉川慎之介記念基金」を設立した吉川優子氏です。

吉川さんは事故の起きた状況を説明し、お泊まり保育の計画の中に天候や川の状況の確認、ライフジャケット着用の必要性などがきちんと盛り込まれていなかったことを指摘。

吉川氏は教員を目指す学生に向けて、体験活動や教育のねらいは何ですか、と問いかけられました。教育現場では、毎年やっているからやるという考え方は持たないでほしい。新しいことをするときは、万善の準備をと。また、命を守ることは、厳罰化するとかということにつなぐのではなく、ガイドラインなどを徹底することだと続けられました。


学生の学び

この日の学生は、ワークシートを手元に、リモートで吉川氏の講義を受けました。

ワークシートとはいえ、一つ一つの問いは深く考えさせられる内容ばかりでした。それも教育現場に立つ者として一度は立ち止まり、また自分なりの考えをもつことが必要な内容です。

①あなたにとって子どもの存在とは ②水辺でどんなことをさせたいと思いますか ③子どもの命を守る、育むとは……あなたの立場で、社会全体で ④あなたは子どもたちにとってどんな先生、大人でありたいですか

子どもに豊かな体験や学びをしてもらうために、子どもの命を守るとはどういうことかを今後も考え続けてほしいと、口調こそ静かですが、熱い思いが伝わる90分でした。

真剣なまなざしでワークシートを書き込み、学びをまとめていました。(2021年6月29日、30日)









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