TEACHER Interview 05 加藤 拓由さん

2020.5.13

自分で考えることを大切にし、

時代に合わせて常に学び直せる人に。



教育学部准教授

加藤 拓由 さん

[かとう・ひろゆき]

愛知県出身。東京外国語大学で中国語を専攻、副専攻は英語。卒業後、東京都立中学校の英語教師となる。東京で6年間勤めた後、地元の愛知県内の公立小中学校やインドの日本人学校で31年間にわたって教壇に立つ。2019年4月より本学に赴任。

一冊の本とある先輩教員との

出逢いが自分の教師人生を変えた 


ー先生になられたきっかけを教えていただけますか。

高校生の時に出会った一冊の本が大きなきっかけでした。それは夏休みの課題図書だった、灰谷健次郎さんが書かれた「兎の眼」です。

ー小学校に赴任してきた新米の女性教師が子どもたちと向き合う中で成長していく姿を描いた小説ですね。

そうです。小説を読んで新鮮な衝撃を受け、その世界に引き込まれて、自分も先生を目指そうと思いました。


ー実際に小学校の先生になられたんですか。

いえ、大学では中国語学部にいて、副専攻として英語を学んで英語教員の資格を取得していたため、卒業後に東京の公立中学校の先生になりました。ところが当時、その中学校には中国残留孤児の2世や3世の子どもたちがいて、大学で中国語を専攻していた私は、もうすぐ定年を迎える年配の先生と一緒に、彼らの日本語教員をしてほしいと頼まれたんです。トラブルが多い生徒ばかりで、私の教員人生は難しい場面からのスタートでした。

ーまさに「兎の眼」の世界ですね。印象に残っている当時の出来事はありますか。

もともと日本語教員を担当されていた先生は、東京大学を出て英語教員をされていたんですが、とても穏やかな方で、子どもたちはその先生のことが好きでした。ある冬の日、私は音楽教室の前でその先生がじっと立っている姿を見かけたんです。子どもたちはよくトラブルを起こし、教室から逃げ出すこともありましたが、その先生は彼らが教室から飛び出していかないように、子どもたちの学びが成り立つようにと、寒い中、教室の外に立って子どもたちを静かに見守っていたんです。

ーその情景が眼に浮かぶようです。

自分もその先生のように、子どもたちを遠くから静かに見守れるような仕事ができたらいいなと思いました。あれはその後の私の教師人生を形づくるシーンでした。


英語教員として

31年間子どもたちと向き合う 


ーそれからずっと教員を続けられたのでしょうか。

そうですね。気付けばあれから31年間、先生を続けていました。東京の中学校に6年間勤めた後、地元の愛知県に戻り、公立小中学校で英語教員をしていました。文部科学省の派遣教員として、インドの日本人学校で教えていたこともあります。

ーインドで?そこでもいろんな体験をされたのではないですか?

インドではとにかく毎日、衝撃的なこと、日本の常識は通用しないことが起こりました(笑)。

ー学校も日本とは随分違いましたか。

インド西海岸のムンバイにある日本人学校に赴任して、小中学生に全教科を教えていました。基本的なカリキュラムなどは日本と同じですが、総合的な学習の時間には、ほかの国の文化を学ぶ授業を行なっていました。ある日、学生がガンジーさんのお孫さんとよく遊んでいると話したので、驚きました。

ーインド独立の父と呼ばれる、マハトマ・ガンジーさんのお孫さんですか?

はい。そのお孫さんと実際にお会いすることができたのですが、60代くらいの女性で、気さくにお話をしてくれました。その方がピアスをあけた時、ガンジーさんは「可愛いね。でもあなたにはもっと似合う、美しいものがあるね」と言ったそうです。まず、相手を褒めて、優しく諭すように言葉をかけるところにガンジーさんの素晴らしい人柄が垣間見えたように思いました。そんな思い出話を直接お孫さんから聞けたことは、日本ではできない貴重な経験でした。


ー2019年度から本学に赴任されましたが、大学生に教えることは何か違いがありましたか。

私はそもそも教えるというより、学生たちがどうしたいかを聞き、アドバイスをするというスタンスをとっていますので、小中学生でも大学生でもそのスタンスは変わらないですね。何より、本人に考えさせることを基本としています。

学生が主体となって

子ども向けオンライン授業を実施


ー3月に学生が就学前や小学校低学年向けにオンライン授業を行ったそうですね。

新型コロナウイルスの感染拡大による北海道幼小中校一斉休校の知らせを受けて有志が立ち上げた「おうちde“まなび舎” 」というウェブサイトがあり、期間限定で子ども向けの無料オンライン出前授業を行うということをfacebookで知って、ゼミの学生や友人たちに声を掛け、オンライン授業を実施したんです。

ーそのオンライン授業についてもう少し詳しく教えていただけますか。

これはZOOMというウェブ上の会議システムを利用することで、先生と子どもたちが双方向で対話しながら進められるオンライン授業です。1コマ40分で、定員は20名。全国の子どもたちが事前に好きな授業予約を行い、当日、ウェブ上の部屋に集まって授業を受けます。

ー授業は学生が主体となって実施したと聞きました。

はい。先日は6名の学生が自分たちで内容を考え、授業を行いました。小さい子どもは集中力を保つ時間が短いので、40分の中で3人が分担してゲームやクイズを中心に、楽しみながら英語を学べるよう工夫を凝らしていました。


ー子どもたちの様子はいかがでしたか。

当日参加した子どもたちはタブレットの操作もスムーズでしたし、初対面の子どもたち同士であっても普通に授業を受け、画面を通して積極的に発言をするなど主体的な学びができていました。学生たちにとっても、自分たちで考えてオンライン授業を体験したことで、こういったやり方もあるのだと知ることができ、とても良い経験になったと思います。今回のことで、教育の新しい形が見えたように感じます。


時代の変化に合わせて

常に学び直せる人に


ー何か学生たちに伝えたいことはありますか。

今は変化の時代です。昔のように大学を卒業して教師になり、そのまま安定して、ずっと教師でいられるとは限りませんし、仕事や社会に対する見方を変えないと、生きていけない時代になると思います。そこで必要なのは「常に学び直せる人になること」だと思います。

ー学び直せる人、ですか?

そうです。これからは一度学んだらそれでいいのではなく、時代の変化に合わせて常に学び直していく必要がある。そのためには、いろんな知識を誰に聞くべきかが分かって、ちゃんと聞ける人になることが大切です。人とうまく関係を築き、たとえば、相手が後輩や新人であっても「このソフトはどうやって使うの?」と素直に聞けるとか。

ーなるほど。確かにとても大切なことですね。

学生たちにも、その先に学生たちが教師となって教える子どもたちにも、現場で常に学び直し、アップデートできる人になってほしいと思います。


[オンライン授業] 


2020年3月に新型コロナウイルス感染拡大防止のため、全国的に小中校が一斉休校をした際に北海道に住む有志が立ち上げたオンライン出前授業「おうちde”まなび舎” 」を通して、私の声かけに賛同した学生らが自ら内容を考え、40分間のオンライン授業を実施。就学前や小学校低学年の子どもたちが楽しんで英語を学びました。


ー岐阜への想いー

隣県の愛知出身であることや、学会などでよく足を運んでいたこともあり、私にとって岐阜は赴任前から馴染みのある場所でした。
本校はアクセスもよく、春にはレンゲ畑が広がっていたり、近くの堤防の桜並木が美しかったりと自然も多く、よく息抜きにジョギンをしています。
日本の社会の基盤は地域であるので、学生には地域との繋がりを大切にし、地域を育てる人となってほしいと思っています。

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