持続可能な社会の実現をめざして 岐阜聖徳学園大学のSDGsへの取り組み

2021.4.6


岐阜聖徳学園大学では、2020年5月に「SDGs(持続可能な開発目標)に関するプロジェクトチーム」を発足し、本学のSDGs方針や行動目標、取り組みについて検討してきました。その後、プロジェクトチームからの答申を受けて、藤井德行前学長から本学のSDGs方針や行動目標が示され、SDGsに関する取り組みを推進していくこととなりました。また、「SDGsサポートチーム」を発足し、SDGs達成に向けた学内体制が整備されました。そこで、本学のSDGsの実現に向けての取り組みについて語る対談を行いました。


《対談参加者》前列左から

髙田準一郎 教育学部教授
柏木良明 副学長
寺田光宏 教育学部教授
河野公洋 経済情報学部教授
徳広圭子 短期大学部教授



ー本学でのSDGs(持続可能な開発目標)に対する取り組みについて、どのようにお考えになり、取り組まれていらっしゃるのかを、それぞれにお話しいただきたいと思います。まずは、柏木副学長からお伺いできますか。


柏木良明 副学長

持続可能な社会を築いていくために
SDGsの心を持ち、社会で活躍する人材の育成を。


2015年に国連で行われたサミットで、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」という国際的な目標が採択されました。日本においてもSDGs実施方針が示され、政府の具体的な取り組みの重点事項を盛り込んだアクションプランが策定されています。そんな中で、本学でもSDGsを活用した大学としての教育の展開を進めることとなり、プロジェクトチームを設置して、どんなことが実施可能であるのか、チームの先生方を中心として考えていくことになりました。

ープロジェクトチームの設置から、本学での取り組みの展開が始まったのですね。

そうです。SDGsは「誰一人取り残さない社会の実現」を目指しています。考えてみると、本学の建学の精神には、仏教精神に基づいて「平等」「寛容」「利他」という精神がありますが、これはSDGsそのものであります。自己中心的な考えで行動するのではなく、他の人を思いやり、他の人のために尽くす人材の育成を目指しているのですから、まさにこの建学の精神はSDGsに通じるものだといえます。


ー本学としてはSDGsにどのように取り組むべきだと思われますか。

本学の教員も職員も学生も、さらには卒業生のみなさんにも加わっていただいて、みんなでSDGsについて考え、実行することが大切だと思います。


ー続いて「SDGsに関するプロジェクトチーム チームリーダー」を務められた髙田教育学部教授はいかがでしょうか。


髙田準一郎 教育学部教授

プロジェクトチームで議論を重ねて
本学らしい方針や行動目標、取り組み案を策定。


2020年5月にプロジェクトチームを発足させ、チームリーダーとしてSDGs実現に向けての方針、行動目標の答申及び取り組み案が策定でき、ホッとしています。チームでは4名の先生方、2名の事務の方、さらに総合企画課(現 学長室)も加わっていただき、いろいろと議論できたことが大変良かったと思います。特に方針、行動目標につきましては、本学の建学の精神を捉えて策定できたことが、大きな特色の一つになっているのではと思います。

ー先ほど柏木副学長が話されたように、本学の建学の精神が活かされているのですね。

はい。プロジェクトチームでは、「教育」「研究」「社会貢献」を3つの行動目標としました。みなさんでいろいろと議論をしていく中で、本学が大学という教育機関であることを踏まえて、SDGsの視点から教育を考え(=教育)、SDGsのつながりの中で研究し(=研究)、その教育や研究の成果をもとにいかに社会と連携していくか(=社会貢献)という3つをSDGsの取り組み案として策定しました。これらの行動目標は、地域社会とネットワークをつなぎ、SDGsを実現していくための大きな枠組みとして考えてみたものです。

ーそのほかに議論をされたことはあったのでしょうか。

このSDGsの精神というのは、自主的にできるところから取り組むものだという点にも特に留意しました。そういった意味で本学として、2020年10月に「SDGsサポートチーム」が発足されました。


ーこの「SDGsサポートチーム チームリーダー」である寺田教育学部教授はリーダーとしてSDGsをどうお考えになられているか、また、今後の展望などもお聞かせください。


寺田光宏 教育学部教授

専門性を越え、研究の価値を捉え直し、

研究を社会とつなげて「研究と社会貢献の融合」を。


私は先ほど髙田先生がおっしゃった「教育」「研究」「社会貢献」の3つの目標の中で、誰がどのような取り組みができるかを考えたところ、なかなか具体的なことが浮かばなかったことから、まず、自らやってみようと考えました。そこで、笠松町歴史未来館で開催された本学との連携企画展「科学するっておもしろい!」で展示するパネルを制作しました。

いろんなキャラクターを入れたり、本学の卒業生にイラストを描いてもらったりしてイメージをやわらかくすることで、わかりやすくSDGsについて興味をもってもらえるようなパネルを制作しました。 特に「つながり」(レリバンス)をテーマとしていて、パネルの中で生物圏(自然界)と社会圏、経済圏のつながりを提示し、私自身の研究はどのあたりになるのかをわかるようにしています。みなさんも、ご自身の専門分野がどこに関わりを持っているのかがわかるものを作られるといいかと思います。

ー本学には、様々な研究をされている先生方がいらっしゃいますが、今後はその研究をどのように社会貢献に活かしていくかが重要になってくということですね。

SDGsの実現には、価値の捉え直しが必要です。今後望まれるのは「研究と社会貢献の融合」ではないでしょうか。私自身もある研究分野の枠の中にいますが、自分自身の研究を振り返り、価値を捉え直し、SDGsとしてどういう意味をもつことができるかを考えることが、これからの私たちの責務だと考えています。どのような研究も必ず社会貢献ができると思います。様々な研究に多方面から光を当てていくのが、SDGsサポートチームの仕事だと思っています。


ー続いて「SDGsサポートチーム メンバー」の徳広短期大学部教授にお話を伺います。


徳広圭子 短期大学部教授

教員、学生、職員がともにSDGsについて考え、

大学の中がつながり、活性化していくサポートをしたい。


ー国連持続可能な開発ソリューション・ネットワークなどが毎年発行する「サステナブル・ディベロップメント・レポート」によると、日本は、SDGsの17の目標のうち、ジェンダーや不平等、パートナーシップなどについてはまだまだ目標の達成度が劣っています。そういったことを踏まえて、今後の教育や学生指導などにおいてどのように取り組まれていこうとお考えでしょうか。

2020年度のSDGsの目標達成度が世界17位であっても、ジェンダーなどの項目によって随分差があるのが日本の特徴ということなんですが、そういうことを教員がまず知って、それを学生に伝える、それから職員と一緒に考えていく。そのように大学の中が「つながる」ということをしていくことが大切だと思います。

ーまず教員が知り、それを学生に伝えていくことが大切なんですね。

たとえば消費税が10%になりましたが、これは幼児教育・保育を無償化するということで2019年10月からスタートしたもので、同時に、学びたい人が学べる環境を作るために高等教育の無償化も進みました。これは日本に子どもの貧困対策の推進に関する法律がしっかりあって、人はきちんと教育を受けることで様々な活躍ができるという前提があるからなんです。


SDGsに深く関わることですが、それを知らなかったり、SDGsと結びつけて捉えていない学生も多いように思われます。そういったことを学生に伝えていく中で、いろんなところがつながっていくといいなと思います。そして、せっかく大学という教育機関なので、学生のみなさんにも頑張ってもらって、地域貢献という形にもつながってほしいと思います。そのためにも、SDGsサポートチームでは、いろいろな形でのサポートをしていきたいと思います。


ー「地域・社会連携センター長」で 「SDGsサポートチーム メンバー」でもある河野経済情報学部教授は、授業の中でもSDGsの話によく触れていらっしゃいますが、学生にどのようなメッセージを込められているか、どのような学生を社会に輩出していきたいかなどをお聞かせいただけますか。


河野公洋 経済情報学部教授

様々な知の集結が総合大学である本学の強みであり、
教員は研究という知を社会に還元をしていくべき。


私は学部横断型教養教育「Yawaragi Basis」の授業も持たせていただいており、6年前の講義の中でSDGsについて取り上げたのが最初になると思いますが、それから少しずつ授業に取り入れています。そこで経済情報学部ではなく、教育学部や外国語学部や看護学部の学生たちに「日本はいうほど豊かな国じゃないんですね」と言われて、すごくショッキングでした。目から鱗というか。経済的なビジネスライフでいうと日本は豊かな国なんですよ。ところが、本当の意味でそれが豊かかというとそうじゃない、ということを学生から気付かされたんです。

ーたしかに、経済的な豊かさとSDGsが目指す本当の意味での豊かさは違いますね。

そこで、私は教員の使命として、授業の中でSDGsについて取り上げ続け、今どれくらい達成していない目標があるのかなどを伝えないといけないと思っています。そして、それぞれが持ち帰って、自分の勉強の中でできることを探ってもらうという、そんなきっかけが与えられればと思います。


先ほどのサステナブル・ディベロップメント・レポートのように、日本はSDGs達成度が世界で17位であっても達成している項目はたった3つであったりと、まだ問題が多いのが現状です。しかし、本学には5つの学部にありとあらゆる先生方がいらっしゃって、どの分野もみんなで補い合いながら17項目についてやっていけば、大学として全部達成できるのだろうと思います。それも、無理して頑張ってというのではなく、日々の生活の中に入れていけばよいのだと思います。

ーまさにそこは、本学が総合大学である強みですね。

教養科目をSDGsの項目でラベリングしてみようという話があり、みなさんがシラバスに全部ラベリングをしてくださいました。教授会でその報告をすると、多くの先生方から教養科目だけでなく、専門科目もすべてラベリングしようというお話をいただきました。このように大学全体で考えて、本当にいろんな問題を全部網羅できるとしたら、これほど良い環境はないと思います。

ー今後の大学としての社会貢献事業の展望や、目指すべき方向性についてはどのようにお考えですか。

今は私たちが研究したものを学生だけに還元するという時代ではなく、教員はそれぞれの研究を社会に還元していくことが大事だと思います。公開講座では、2020年から、その講座がSDGsの17項目のどれに該当するかラベリングされました。本当にカラフルで、本学にはいろんな知の精鋭が集結しているんだと実感しました。これから先、高校生向けや一般の方向けの講座も開かれますが、大学は常にこのような知の発信基地であるべきだと思います。



ー本学のSDGsへの取り組みについて、みなさまにとても有意義なお話を伺わせていただきました。本日はどうもありがとうございました。

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